君と出会った瞬間から僕を支配するのは欲だ。 「」 「ん?」 「何か食べてる?」 「チョコ食べてる。・・・ハイ、あげる」 キャンディのように包装されたそのチョコレートは無造作にポケットの中へ放り込んだ。 ねぇ。こんなモノじゃあ僕の欲望は抑えられないんだ。 ほら、立ち上がった僕に身構える君を見て、この渦巻いた感情はどんどんどんどん膨れ上がる。 「ひば・・・り、」 拒もうとする腕を押さえ込んで唇を奪った。 「ふぁ、・・・は・・ぁ」 閉じた唇を割って、侵入して、歯列をなぞり、熱い舌を絡めとる。 そうすればは、唇を離しても言葉を発することが出来なくなる。 「ハァ・・ハァ・・・ハァ」 「ねぇ」 「ハァ・・ハァ・・・ハァ」 呼吸するだけで精一杯の。だけど、それでもその黒い瞳は真っ直ぐに僕を(僕だけを)映すんだ。 「噛み殺してしまいたくなるね」 この瞬間に君を殺せば、その黒い瞳には永遠に僕が刻まれ続けるだろう。 「君を殺して僕も死んでしまいたくなるよ」 そしてこの瞬間に死ねば君は永遠に僕のものだ。 きっとそうすれば何時も渇いて暴れだすどうしようもないこの欲望も、きっと満たされる。 「、」 僕は、君が何時も浮かべる表情も、その意味も知らない。 ・*・*・*・ 眠ってしまったに口付けると、仄かに甘かった。 すぐにその理由に思い至り、ポケットを探る。取り出したのはに貰ったチョコレート。包みを脱がすとそれは既に溶けかけていて、涙を流していた。 そうだ、はいつも泣いているのだ。僕の手の中で。 その涙でさえ見ることを許されるのは僕だけ。その事実に口端が上がる。 本当は、笑っていて欲しいなんて。 僕の前では消して笑わない君。僕でさえ見れないその笑顔を他の誰かが見ることが出来るだなんてありえない。あっちゃいけない。だって、そんなことしたら僕のこのどす黒い感情はどうなってしまうんだ。 「、」 だから、君よ、どうか笑わないで。そうだ、 「僕じゃない、悪いのは君だよ」
僕の心をかき回しておいて、全てをくれないのせいだよ。 |