美しくて、儚くて、それは骸に似ている。
彼の生き様に(そしてきっと、死に様に)けして言わないけれど。



骸は優雅にありふれた家の、ありふれたソファーに腰掛けてあたしが淹れたダージリンをすすっている。そんな姿は大人っぽい、だけど普通の男の子。いつもの骸を知るあたしから見るとねぇ、全然似合ってないよ。あんたにはもっと暗くてじめじめしている、日常とはかけ離れたスリリングな世界がお似合いよ。ああ、でもそんなの 楽しい?



「ねぇ骸」

「何ですか?」

「楽しい?」



結構シリアスな顔と口調で問いかけたのに、骸はそんなこと意に介さず“楽しいですよ”とひょうひょうとして応えた。



「お茶をするのは好きですからね」

「うん、そーゆーこと聞いたんじゃない」

「クフフ、分かってますよ。・・・そうですね、生きることも楽しんでますよ。がいますから」



骸の軽口はいつものことなのであたしは“ハイハイ”とテキトウにあしらう。嫌味を言われるかもしれないが骸だって適当に応えているんだからおあいこだ。



、僕は本気ですよ」

「何が」

「貴女といるから楽しい、ということです。――僕はが好きですから」



そう言った骸の顔も口調も先ほどのあたしと同じ真剣そのもので、戸惑う。どう応えていいのか分からなくて、とりあえずため息をついた。

「どうしてこんな時にこんな場所で言うのよ。本気なのか分からないじゃない」

「本気ですよ」



骸はさっきと同じ言葉をもう一度繰り返した。今度は少し強調して。
もうこれは本気にするしかないみたいだ。だけどだけどだけど、



「だってアンタ人が嫌いなんでしょう?」

「そうですね・・・人は嫌いじゃないですよ。嫌いなのはこの世の中です」



やっぱり、骸はこの空間に生きてはくれない人。



「じゃあ、その世の中をどうするの?」

「僕が全て破壊します」



でもね、やっぱりあたしは今のところこの空間に生きてるのよ。



「骸、あたしのこと――」

「好きですよ」

でも、でも、それでも、



「じゃあそのあたしとこの世を生きるつもりはない?」

「ないですね。世界が終るまで共にいて、共に消えて欲しい」

「ふうん」

「嫌ですか?」



例えば幸福の世でも、不幸の世でも、きっとそれは同じことなのだ。



「それまでにあたしが骸を好きになっていたら嫌じゃないわ」



重要なのは2人が共にいること。

「そうですか、なら大丈夫ですね」





“クフフ”と笑った骸の瞳の奥に、来る日の夢を見た。

にまみれたソレはなんて甘美な、あぁ幸せに満ちて。









花火


                          それは美しき世界の終焉