君を一番魅力的に引き立てるのはあの日のような真っ青な空なのに、残念。今日は鉛色の雲がかかっている。もうすぐ俺達の間には天の川よりでっかい溝が出来てしまうのだから、最後にくらい最高の君を見せてくれてもいいのにな。 まぁそんなもの無くても今日の君は最高だ。“もう会えない”の言葉がフィルターをかけて、あぁ、そんな煽情的な顔をしないでくれ。あの日のように笑ってくれ。俺なんか居なくても平気だって、他の男の下でもああやって笑っていられるって。そしたら俺は、何の未練も残さずに、おまえの前から消えるから。 青空の下で、柔らかい髪が俺の肌を撫でた。空気の振動の先には笑うおまえがいたんだ。 「なぁ、」 「なぁに、ディーノ」 「もしあの日、あの日に俺が一緒に居てくれって言ったら、来てくれたか?」 は眼を一杯に見開いて、瞳が落ちてしまいそうだよ。 微かに開いた唇は科白を形作ることは無い。そうさ、そんなこと出来るはずないとわかっていた。それなのに口に出した俺は卑怯者だな。 「何てな、じょう――」 「やめて」 言葉をさえぎった。俺の袖を掴んだ彼女の指は強すぎる力のせいで白くなり、震えていた。(きっと力のせいだけじゃない) 「・・?」 「やめて、そうやって冗談にしないで」 だって仕方が無いだろ?それが俺の気持ちに歯止めをかけている理性なんだ。俺のせいじゃない。 「私、ディーノが好きだよ。あの日だって今だって、変わらない距離に居るの」 俺を煽るが悪いんだよ。 例えば今、おまえが俺の胸の中に居て、早鐘のようなこ心臓の音を聞いているのも、のせい。 「、あまえ馬鹿だ」 「どうして?」 「せっかく俺が我慢したってのに」 「ふふっ、ディーノに我慢なんてガラじゃないよ」 この日、初めてが笑った。 でもそれは・・・ダメだ。情けないことに、とても未練を断ち切れそうも無い。むしろ、それは倍に膨れ上がって。 「確かにな」 だって、君が。温かい肌をした君が俺に笑いかけてるんだ。 「、俺と一緒に来てくれ」 差し出した腕、君は。
あの日
いつか、今日のことだって“あの日”と呼ぶ時が来る |