あたしが愛を捧げまくってしまっている人(通称恋人)はどうしようもない人です。どうしようもなく捻くれていて、自己中心的で、暴君で。その上変態でもあるのです。・・・なんかもう救いようが無いって感じだな。ね、骸。



「それだけ聞いているとが僕のどこが好きなのか聞きたくなりますね」



・・・なんかその期待するような目でこっちを見るの止めてください。骸、あんた絶対なんかいやらしい想像してるでしょ。間違ったってそんなことは言いません。・・・そうだね。“好き”って気持ちに理由を付けるのは嫌いなんだけど、敢えて言うなら。きっかけは“瞳”だった。綺麗なものは3日で飽きるってよく言うけれど、骸の瞳は飽きないの。綺麗は綺麗でもきっと整然とした美しさじゃないからだね。骸の有様を映してるみたいな歪な美しさ。“狂気故の美”だね。



「それを美しいと感じるあなたも十分狂っていると思いますよ」



そうかな?でもまぁ、あくまでもそれは“きっかけ”だからね。それが全てじゃないし。“どこが”と聞かれたら全部好きだし、全部嫌い。“愛しい”って気持ちで重要なのは“どこが好きか”ってことじゃないんじゃないかな。



「じゃあ何が重要なんですか?」



そうね・・・“大きさ”だってそんな測れやしないもの意味ないし。“何がなせるか”じゃない?ま、コレが出来るから愛が強いだの弱いだのは無いだろうけど。愛するがゆえに出来ないってのもあるだろうし。・・・何言ってんのか自分でよく解んなくなってきたよ。とりあえず、愛のカタチも表現も重要なことも、人によって違うってことかなぁ。



「面白いことを言う。なら、は何が出来るんです?僕への愛故に」



うわっ、そーゆー恥ずかしいこと臆面無くさらりと言わないで。



「クフフ、照れちゃって可愛いですね」



うっさいな。照れてないよ、別に。いいよ。じゃああたしも臆面も無く言ってやるわ。・・・こんな話していること自体が既に恥ずかしいんだけどさ。
あたしは取りあえず骸の傍にいる。何も出来ないし、役にも立たないかもしれないけど。世界が敵になろうとあたしはずっと骸の味方で在り続けてあげる。骸が目指すものをあたしも一緒に見ていくの。



「いいんですか?僕は俗に言う悪役ですよ」



いいんだよ。だってあたしが好きなのは骸なんだもん、しょうがないじゃない。



「・・・やっぱりも狂っている」



あっ骸照れてる!!いま笑ったでしょ?



「煩いですよ。さて、に愛を語っていただいたところで今度は僕のへの愛を語ってあげますよ」



そう言って近づく骸の唇をあたしは眼を瞑って享受した。
この瞬間の甘美なるときめきに悪役だのどうのなどという野暮なことは関係ない。乙女たちはただただ恋人への愛しさを募らせるばかり。
ほら、やっぱりあたしは狂ってなんかいないよ。だって、ほらもっと現実的に思考をめぐらしてみてよ。好きになったらその人に幸せになって欲しいでしょう?よく聞くじゃない、「例え世界が滅んでも彼が幸せに・・・」みたいな科白。あたしの場合それが例え話じゃすまないってだけのこと。骸の幸せと世界が対極にあるってだけの話。骸がたまたまどうしようもなく悪役だってりするからこんな小難しく考えちゃったり語ったりしたけど、さ。 あたしが骸をどうしようもなく愛しちゃってるってそれだけのことだよ、
結局



取りあえず今は長ったらしい言葉なんかよりよっぽど分かりやすいあなたの愛情表現に溺れていようか。