眼差し
何もかもを諦めた眼というのはこんな眼のことを言うんじゃないだろうか。



、ボーっとしてどうしたんだ?」



アナタの穏やかな笑顔を見ると時々無性に泣きたくなる。



「ンー、世界平和についてどう思いますか?」
「世界平和?いきなり何言い出すんだ」
「まぁいいからいいから。どう思う?」
「そうだな…途方も無い話だけど、そうなればいいと思うよ」



焦がれたような眼をして応えてくれたアスラン。だけど私には分かってるんだよ。その眼差しの先にある”平和な未来”に幸せを謳歌する君がいないこと。




はどうなんだ?」
「え?」
「世界平和」
「私は、…うん、平和な世界で大好きな人の隣に居たい」



緩やかに優しい空間の中でアスランと、笑う。



「そうか、じゃあそんな日のために俺も頑張らないとな」



チクリって胸に何かが刺さった。

どうして、どうしてそんな”幸福”を第三者の視点から見ているの?まるでそこにいないみたいに。
軍服は死装束だと誰かが言っていた。アスランもそう考えているのだろうか。だとしたら、なんて愚かで悲しいんだろう。





「アスラン、」
「何だ?」
「今度の非番の日、みんなで遊びに行こう!」



アスランはきょとんとした顔になって、それから困ったような表情をした。



「俺、次の休みは射撃訓練を―…」
「そんなの毎日してるでしょ。たまには気分転換しないと」



”負けたよ”と言って笑ったアスランは……ああ、ああ、なんて、愛しいんだろう。






「それで、どこに行くんだ?」
「みんなで話そ。計画立てるのも楽しいんだよ」
「そうか?」
「そうだよ」




みんなでくだらない話をして、馬鹿騒ぎをするのも。たまに喧嘩をしたりするのも。目的もなくブラブラと歩いたり、ちょっとした景色にドキドキしたり。世界には楽しいコトがいっぱいあるんだって、アナタに見せてあげたい。
その権利は誰にだって(私達にだって、平等にあるはずで。この軍服は死装束なんかじゃなくて、未来を手にするための誓いの印なんだよ。


ギュッとアスランの手を握ると彼も私の手を握り返してくれた。
こんな風に、世界がアナタを繋ぎ止めてくれると良い。





「ね、楽しみだね」
「ああ、そうだな」




先ほどと同じ焦がれたようなアスランの眼差し。
だけど、ほんの少しだけそこに無邪気さが紛れてた。











(その先に幸せなアナタが居ることを祈ってる)