例えば、シーツに刻まれた皺を見れば底に眠るの姿が。 白磁のカップを見るとの白い肌が。 いたるところに君の瞳や唇があって、こんな日はもう何も出来ない。体中が、体中で叫んでいるんだ、「が足りない!」 眼を閉じれば愛しい愛しいがそこにいて、俺は妄想にふける。(あぁ、だって俺は健康的16歳の男子だから) 茶色い髪に指を絡ませると柔らかい感触とともにシャンプーの香り。しっかりと閉じられた軍服の襟を少しだけ肌蹴させれば現れる白く華奢な首筋。誘われるままに唇を落とし、強めに吸えば赤い花が咲いた。の顔を見ればその花と同じ赤い顔で俺の名を呼ぶ、甘い声で。 「アスランっ!」 「えっ・・・?」 その声があまりにもリアルで(そして全く甘くなくて)驚いて眼を開ければが立っている。もちろん本物の。 「もうっ、やっと気付いた。何ボーっとしてたの?」 「え?いや、なんでもないよ」 君を考えてみだらな妄想にふけっていたなんて口が裂けても言えるものじゃない。ポーカーフェイスは苦手だけどエスパーじゃない君は俺の考えていた内容まで分かるはずもないんだ。 「それよりも、なにか用があったんじゃないのか?」 「ああ、うん。何かディアッカが・・・」 「ディアッカ?」 彼女が口にしたのは意外な名前。ディアッカが俺に用があるだなんて珍しい。またイザークについての愚痴だろうか。 「そう。“今夜は俺の部屋に集合だぜ、隊長!”って」 「は・・?全員か?」 「ううん。女の子は立ち入り禁止だって・・・。私ダメってことでしょ?ずるいよ」 ・・・女子は禁止。そしてディアッカ。なんだか大体予想がついてしまった。 「イザークは機嫌が悪かったんだけど、ディアッカが男なんだからしょうがないだろって」 のその言葉で予想が的中していたことを知る。やはり溜まってしまうのは俺だけじゃないらしい。 それにしたって、ディアッカもにこんなこと頼むなよな。気付いたらどうするんだ?そう思ったら思わず溜息が零れる。 「アスラン?どうしたの?」 「いや、何でもない」 心配そうに俺を覗き込むは可愛いの一言に尽きるのに、俺には最高に悩殺的だ。眼をそらしてみたところで熱くなっていく身体は止められそうもない。 「アスラン?」 「いや・・・、俺も今夜は行かないよ」 「本当!?」 嬉しそうな声を出すに俺の顔も綻ぶ。 本当だよ。だってむさ苦しい連中に囲まれていたって甘い甘い妄想は出来ないんだ。 「ああ」 の髪に指を差し込むとシャンプーの香りがして、彼女はくすぐったそうに笑う。 襟元を肌蹴させても、先ほど俺がつけた花はもちろん無かった。 「、今夜は俺の部屋においで」 今度こそ本当に同じ場所へ花を咲かせると、は小さな声を上げてから真っ赤な顔コクリと小さくで頷いた。 どうか俺に、甘い甘い夢をください。 |