のケータイのアドレス帳。1番上にあるのは”忍足侑士”の文字。
おっしーのものにもやはり””の文字がある。



「いいなぁ…」



は『侑士が勝手にやったのよ』なんて言っていたけれど、私はそれが羨ましくてたまらない。私のアドレス帳の1番最初の名前は!”跡部景吾”。だけど、知ってる。 景吾のモノの最初が私じゃないコト。



「まぁ女の子じゃないだけマシだけど…」



などと考え事をしていたら、お茶の用意をしていたことをすっかり忘れてしまっていた。手元を見るとティーポットへ入るはずの葉は零れて、一部は床にまで落ちている。



「あ〜あ、やっちゃたぁ」



もともと悶々としていたモノが失敗によりさらに高まる。
だいたいアドレス帳の始めくらい恋人の名を入れてくれてもいいのではないだろうか?



「”監督”はないでしょぉ」



それは、景吾にとってテニスがとっても大事なモノだってことはもちろん分かるけど。

……サミシイ。




、お茶淹れるのにどんだけかかるっ……何してんだ?」



床に散ったお茶の葉っぱを片付けるために掃除機を用意していると、本日のお客様・跡部景吾がキッチンに顔をのぞかせた。



「葉っぱ、零しちゃったの…デス」



そう言うと、景吾は一瞬呆気にとられたように眼を大きくし、すぐにその長いまつ毛を伏せて溜息をついた。そんな些細な表情の変化が好きだよ。



「ったく。しょうがねぇから紅茶は俺が淹れる。早く片付けろ」

「はーい」



やれやれといった調子で作業するその大きくてキレイな手が好き。
今は小さく皺のよっている整った眉や、いつも余裕ぶってる目元が好き。
好きで好きで大好きで。私の中にあなたほど大きなモノはありません。あなたの中の私はどうですか?私は何番目の位置にあるの?









「おいしい」

「俺が淹れたんだ、当たり前だな」



景吾の淹れた紅茶を飲みながら、景吾の顔をじっと盗み見た。でもだからといって、疑問や望みが解消されたり叶ったりする筈はなくて。 どうせならストレートに聞いてみることにした。
悩むのも考えるのも苦手だ。



「ねぇ、景吾。私のことどう思ってる?」



唐突な問いだったけれど景吾は紅茶にむせるなんて無様な事はしなくて、ただ怪訝そうな顔で問い返した。



「何言ってんだ、今更。言わねぇと分かんねぇのか?」

「分かんないよ」



そんなこと知らないよ。



「愛してるぜ」



そうじゃないの。
そんなコト分かってるの。自惚れなんかじゃなく、景吾がなんとも想ってない女と付き合うわけないって知ってるから。
だけどね、私が知りたいのはね、そうじゃないの。



「どのくらい?」


「お前の気持ちなんて関係なくそばに置いときたいくらいに、だ」



言われた瞬間微笑が零れた。
”世界で1番”とか”幸せにしたいくらい”とか言われるより愛を感じるじゃない?
ねぇ、そのくらい貪欲に私を愛してね。



「急にどうしたんだ?」

「何でもない」



その言葉があればもういいの。
アドレス帳のトップの座なんてそんなモノ、本当はそんなに欲しくない。
望むモノはただひとつだけ―――



アナタが欲しいアナタが欲しい、私を求めるアナタが