キャパシティ 自分ほど心の容量の少ない者など存在しないだろう。 人は余裕の有るように見ええると言うけれど、それは脆くてくだらない虚勢だ。 眉間に皺を寄せて、愛しい少女のことで思い悩む手塚を見た。 その姿はとても微笑ましいものであったけれど、 「大丈夫だよ」 そう言った自分が苦笑まじりだったのは手塚が眩しかったから。 「君は僕と違って正直だから。言葉なんてなくたって伝わるよ」 僕は嘘吐きでたくさんの言葉もきっと上辺だけのもので。その中にあるほんの僅かの“本当”は沈んでしまうから。 気持ちを伝えるのは本当に難しい。 僕は羨ましいんだよ。真っ直ぐで、嘘のない手塚のその、強さが。 「･･･け、周助！」 名前を呼ばれてはっと我に返る。 そばには怪訝な表情をしたがいて、自分がぼうっとしていたことに気付く。 「もう、どうしたのよ。考え事？」 「うん。のことを考えてたんだ」 普段なら照れて、そっぽを向くだったが、今日は違った。不機嫌な顔で真っ直ぐに睨んでくる。その眼に戸惑いつつも、上手に隠してしまう自分のポーカーフェイスに内心で苦笑した。 「どうしたの？」 「あたし、周助のそうゆうところ嫌いよ」 「･･･そう。じゃあ別れる？」 「そうゆう、人を試すような物言いも嫌いだわ」 「･･･馬鹿ね」 しばらく無言の睨み合いが続いた後、はそう言って、僕の頬を柔らかな両手で包み込んだ。 彼女はまるで幼子をいさめるように困った笑顔を浮かべており、それに気付くのと同時に自分が苛立っていたことにも気付く。 「ごめんね。やつあたりだったよ」 「何かあったの？」 「何でもないよ」 「周助、謝っても直さないんだったら何の意味も無いのよ」 の言うことはもっともだったし、僕も悪いとは思っている。けれどもそれで素直に話せるほど、僕は純粋じゃなかった。 再び訪れた沈黙をまたも破ったのは。 「･･･いいわ。言わなくても大体わかるもの」 「･･へぇ？」 「素直じゃない自分が嫌。菊丸や･･･そうね、手塚あたりと比べて悲観中。そんなトコロでしょ？」 悪戯めいた口調で言って、得意げに僕の瞳を覗き込むに僕の眼は丸くなっていたに違いない。 「どうして･･･？」 「だって周助の一生の課題だものね」 「一生の？」 のいってることが理解できなくて眉根を寄せる。いや、言ってることは分かってる。性格にはそんなことを笑顔で言う彼女の意図が分からないのだ。 「そうよ。だから今すぐどうこう出来なくたっていいじゃない。それに･･･」 「それに？」 「･･･何でもない」 「、はぐらかすのはいけないんだよね？」 消えてしまった言葉を問いただすと恥ずかしがりながらも教えてくれた。 酷く小さな声で。 「あたしが手伝ってあげるから」 小さな小さな僕のキャパシティ。 だけど、を受け入れられるだけあればいいと思った。今は。 を抱いた僕の腕は少し余った。