改札口を通り、ホームへと続く会談を下りる。
いつも変わらない動作を、今日は階段の途中で足を止めた。


ホームに立つ周助を見つけたから。


すぐに見つけられたのは周助がキレイで目立つから、だけじゃないよ。
あたしの眼はどんなに遠くても、大勢の人が居ても、すぐにあなたを見つけられるように出来てるの。


それでも声をかけなかったのは、めったに見せないあなたの甘いとろけるような笑顔とその視線の先に居る女の子を見つけたから。


いつも周助のそばに居たのは何も知らないバカだったからじゃない。
その女の子のことだって知ってるのよ。
周助を信じきれずに振った女でしょ?



「周助!」

「あ、



それでもまだあのコが好きなんだね。
声をかけて、肩を叩いて、それで初めてあたしに気付くのに。周助の眼はすぐにあのコを見つけるように出来てるの?



「何見てたの?」

「別に、なんでもないよ」



そう聞けば、周助はあたしにばれないように、もうあのコを見ない。
だから気付かなかったはず、あのコがこちらを見たことに。



「(”本当はまだ想ってる”ですって?ふざけないで)」



あなたが手放したんでしょう。もう返してなんてやらないわ。
もう遠慮なんてしてやらないの。



?どうしたの」

「なんでもない」



ちょうどホームへ滑り込んだ電車に乗り込んだ。さりげなく周助の腕に手を添えて。
あのコの切なげな顔。あれは誤解したね、大成功。



ねぇ、周助。
知ってる?あたしたち最近付き合ってるんじゃないかって噂があるんだよ。
笑っちゃうね。こんなにも周助の心はあのコでいっぱいなのに。



「ねぇ、周助」

「何?」



好きだよ。



いつかあの笑顔をあたしに見せてね。







君じゃなきゃだめなんだ
いつか、あたしを想ってそう言って