あたしは真面目なんかじゃなかった。 誰よりもいい加減で、てきとーな奴。 でも、ずるいから“いい子”演じてるんだ。 誰にも嫌われたくないから。 そして今日も嘘の自分を演じるの。 能天気な貴方の生き方 「や・・・」 赤く跡がついて、痺れてしまった腕をこすった。 「やっと終わった〜」 あたしはちょうど先生に頼まれた荷物を資料室に運び終えたところ。机の上に積み重ねられた資料の山を見ると、1人でよくやったと自分を誉めてあげたくなる。 「あー、それにしてもあの教師は何を考えてるのよ!『、この資料運んどいてくれ』・・・量見てから言えってーの」 人前では絶対に吐かない教師への暴言、1人になるといつも言ってる。 それはあたしのストレス発散法。 「“委員長”だからってねぇ!だいたい好きでそんなものやるかっつーの!!!」 この時もそう、ストレス発散。 ああ、でももうちょっと気をつけるべきだった。 「・・・誰かいんの?」 まさか先客がいたなんて… 「あ、芥川くん・・・」 死角から気だるそうに立ち上がったのは “芥川滋郎” 同じクラスで、ちょっと苦手な男の子だった。 「あ、芥川君、今の聞いて・・・?」 「ジローでいいよ」 ニコッと可愛く笑っていった芥川君。絶対聞いていたに違いない。誰にも知られたくなかったのに。 誰にも知られちゃいけないあたしの裏の顔。 「ねぇ、ねぇ、。今の黙ってるから明日の昼休み中庭に来てよ。俺まってるしー」 なれなれしく人のことを呼び捨てにしたかと思ったら、彼はじゃーね、といってさっさと出て行ってしまった。 あっけに取られているあたしを置いて。 「人呼び出しておいて寝る?普通・・・」 翌日の昼休み。 言われた通り中庭に行くと芥川君は眠っていた。それはそれは気持ちよさそーに。 ホント能天気そうで、幸せそうで。 「だから苦手、だから嫌い」 「あたしが毎日毎日どんな思いで優等生やってると思ってるの?気を張り詰めて、死に物狂いでやってんのよ」 苦しい。 息が、つまるの。 「なのに、なんで芥川君はなにもやってないのにみんな集まってくるの?気楽に生きてて、ずるいよ」 「ふ〜ん。俺のこと嫌いだったんだぁ〜」 「あ、芥川君、起きてたの?」 見ると仰向けに寝転んだままの芥川君の眼は開けられていた。 「ジローでいいよ。んー、寝てたけど、がきたから起きた」 「ふーん」 起き上がって、それでも眠そうにあくびをしている芥川君。金色に近い柔らかそうな髪が陽光に当たってきれいだった。でも、そんなもの無くても彼は魅力的なんだろうなと、ふと思った。いつだって自然体で生きてる芥川君。 「キライじゃないよ」 キライなんかじゃないよ、芥川君のこと。 「ホント!?うれしー」 そう言って芥川君はあたしに・・・ 「キスしたね?・・・オデコだけど」 「だって俺、好きだもん。も俺のこと好きでしょ?」 「いや、キライじゃないとは言ったけど・・・ってもう聞いてないね」 芥川君はもう横になってしまっている。可笑しくて、噴出してしまった。自分の悩みとか、妬みとか、バカらしく思えてくる。 ホントはね、羨ましかっただけなんだよ。 「ねぇ、あたしもそんな風に緩やかに生きられたらいいな。・・ジロー」 できるかな? 「」 「わっ、起きてたの?…心臓に悪いなぁ」 柔らかそうな芝生の上に寝転んだジローがその隣にくるようにあたしに示した。 その次の言葉はすぐに想像がついて、あたしは自然と笑みをこぼした。 「も一緒にお昼寝しよ〜」 「うん!」 君と一緒なら、きっとできるね。 |