snow


駅の前。一人立ち、見上げると嬉しそうに微笑む。
舞い落ちるのは雪の花。






「桜のトンネルだね、きれーい」

「そうだね」

[不二君はいつもこんな素敵なところを通ってるんだ」

少し離れたところに住んでいるが、僕の通っている道を歩きたいと言って、散歩した並木道。



、上ばっかり見てないで。僕の方も見て?」桜の花に嫉妬しちゃいそうだよ。

そう僕が言うと、君は思ったとおりの反応を見せてくれるんだ。少しはにかんで頬を朱に染めながら、僕のほうをそっと見てくれる。笑顔で。



「あ、不二君、髪の毛に花びらがついてるよ」

「え?・・・じゃあ、とって」



悪戯を思いついた子供のように笑って、の正面に立つと、が花びらを取りやすいように少しかがんだ。
そっと、の指が髪の毛を揺らすのを感じるとそのままを抱きしめた。
君はもう、と少し頬を膨らませて見せるけど、すぐに微笑むんだ。
その笑顔が愛しくて、額に口付けた。



「ね、不二君は桜も似合うけど、やっぱり雪が似合うと思うな」

「雪?」

「うん」

もちろん冷たいってことじゃないからねと、付け足す君と笑って、雪が楽しみだねと空を見上げた。






手袋をしていても、寒さにかじかむ指先に白い息を吹きかける。
髪についた雪を払わないのは期待しているから。
あの時桜の花を取ってくれたように、雪の花を取ってくれる優しい君の指を。
周りを行きかう人が増えて、電車がついたのだろうとわかった。改札口に眼を向けると、こちらに歩いてくるが見えた。彼女も僕に気づく。



「不二君ごめんね、寒かったでしょ?どこかお店入って温まる?」

「大丈夫だよ。それより、あの並木道に行こう?」




「ね、不二君」

あの時とは違って、真っ白に染まった並木道を、手をつないで歩いた。手袋越しの温もりを楽しんでいた。



「やっぱり不二君には雪が似合うね。すっごく、綺麗」

「ありがとう」

「不二君、頭真っ白」



クスクスと笑いながら言う君に、じゃあ払ってよとねだる。



「あの時と一緒だね」

「じゃあ、ご希望にそえないとね」



また、抱きしめる。



「あったか〜い」

「冬は良いね、のほうからくっついてきてくれる」

「バカ」



照れ屋な君は赤くなってそっぽを向いてしまう。



「なんたって雪の似合う男だからね。僕のために冬はあるんだよ」



ニッコリ笑って言うと、君は少しあきれたようにしながら顔を戻して、眼が合った瞬間キスをした。
いくつも、いくつものキスをした。





ねえ、僕のために雪は降るんだ。

そして君のために僕は存在し、君のために季節は廻り、冬が来て、雪が降る。



永遠に君に捧げよう

いくつ季節が廻っても

君に捧げるキスをしよう。





僕と、僕の住む世界は紛れも無く君の為に