「え〜っと、?何してんの?」
困惑気味に尋ねてきた清純にあたしはにべもなく応えた。 “それは分かってるんだけどね”と言いながら、さほど困ったようにも見えずに片手で髪をかきあげる清純。こんな時なのに。こんな時だからかな?とてもかっこよく見えた。 「清純は笑ってるのね」 「ん?」 傷ついたって、哀しくたって、悔しくたって、崩れることの無いそれがあたしは堪らなく嫌いだった。 「少しも解らないんだもの」 ごめん、ごめんね。気付くことできなくてごめんね。 だけどお願い。それをあたしのせいだと言わないで。察することの出来ないお前の鈍さのせいだと。 清純の傍にいていい理由が無くなっちゃうのよ。 「、」 「だから、だから結ぶの」 困惑を深める清純をよそに、蝶々結びを再開させる。 「・・・」 「ねぇ、清純。結んだらひとつになれるかな?」 2本で立つ連理の枝のように、 2羽で舞う比翼の鳥のように、 あたしはあなたとひとつになりたい。 「ひとつになんか、なれないよ」 妙にきっぱりとした清純の科白とともに、清純がほどいてしまった2人を繋ぐ紐が頭上からはらりと落ちた。 「うん、解ってる」 解ってたよ。 それでも夢を見たかった。 清純は見たくなかった?嫌だった? 「俺はと1つになんかなりたくないよ」 「そう・・・」 とても明るい声でなんか応えられなくて、あたしの声は我ながら情けなかった。それを聞いた清純が頭を抱えて“なんでわかんないんだー”みたいなことを言っていたけれど、わけが分からないのはあたしも同じだった。 「清純?」 名を呼ぶと、何かを思い立った様子の清純と眼が合った。 次の瞬間、あたしは清純の腕の中にいて彼の温もりを感じていた。 「ひとつだったらこんな風に抱きしめらんないよ?」 「…」 「キスも出来ないし、話も出来ない」 「・・・」 「俺ヤだよ、そんなん。には隣に居てほしい」 清純の心臓の音が聞こえる。 「気持ちなんか解んないでいいよ」 あぁ、でも理解してくれようとするも可愛いんだけどね。なんて言って、おどけた様に笑う清純の笑顔は眩しくて、少し滲んでいた。 「清純、ごめんね。ありがと」 「うん。でも、こーやってると本当にひとつみたいだね」 「・・・そうね」 抱き合っていると清純の鼓動が聞こえてくる。きっと彼にもあたしの鼓動が聞こえているはず。 まるでひとつのような錯覚に陥るけどそれは間違いなく別々の存在。 でも、だからこそ支えあえること解ったから。もう寂しくないよ。 |