――――と金星――――



03.



”少女”が「」さんをモデルにしていると知って、だけどやはり俺にはその絵はに似てると思えるんだ。
”彼女”の隣には新しい絵が増えている。あの時が描いていた”少女”の視線の先にある風景。それはよく知るテニスコートで、 無数に居る部員達の中でたった一人輝いて見える俺が居た。どうか、どうかそれが”少女”ではなくから見た風景であり、俺だって欲しいと願った。



これは、紛れも無い恋だった。



そして、その想いを向ける相手を知った。俺が照らす、見続ける月は君であって欲しかった。




「蓮二、を知らないか?」

「ああ、なら今日は日直だ。教室に居ると思うが」

「そうか、ありがとう」





の教室に走る途中、一人の女の子とぶつかった。



「すまない、大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ」

「…君は…」



ふんわりと笑ったその少女は「」だった。



「え?」

「いや、なんでもない」



花の香りのする彼女はあの絵の少女そのままの姿でそこに居て、でもやはり”彼女”ではない。
俺の”彼女”は、



「幸村くん、なら美術室だよ」

「…ありがとう」



あの窓辺に居る。





美術室のドアをそっと開けると、あの絵がそこにあった。
少女の髪は柔らかそうなブラウンではなく、芯の通った黒髪で、浮かべている表情も違う。だけど、 それでもその少女こそが俺が焦がれ続けた、見ていることしか出来ない月だった。



、」

「…幸村。何で、ここにいるの?」

、やっと手が届きそうだよ」

「幸村?」



不思議そうな表情すら愛しくて、君が月なら見続ける俺は太陽かもしれないと思ったけど、それじゃ嫌だ。 反対に居て追いかけ続けるしかない。だから、俺は君が描いた絵のように輝く一等星になろう。




、君が好きだ」




月と寄り添う金星のように。









...End.




オマケ。


「あの絵、俺にくれないか?」

「嫌よ。彼の部屋に友達の絵があるなんて嫌じゃない」

「………」

「…何?」

「いや、”彼”っていい響きだなって思って」

「……馬鹿」