“鳥葬”というものがある。死体を鳥に食わせて死者を弔うのだ。誰に惜しまれることも無く朽ちていく者をただ、鳥が、嘆いてくれる。 あぁ、しかし汚れたこの身体を食ってくれる(嘆いてくれる)鳥などいるだろうか。 どくどくという音が聞こえる。生きている証のそれは、死に逝く時に聞く血の流るる音によく似ていた。僕はこの音を聞くたびに“寂しい”という感情を思い出す。そしてそれは埋まることなく。僕の生き様と死に様が体現する、それは僕の名だ。亡骸。 「骸、何してるの?」 「の心臓の音を聞いていました」 は、『骸にもそんな可愛いところがあるのね』と微笑んだ。彼女の言葉の成す意味が理解出来なかった僕は、ただ曖昧に笑い返すしかなかった。 「人の鼓動を聞いていると何だか安心するのよね」 優しく笑うと僕では感性だけで何故こうも違う? 目の前に広がる夜空、そこに浮かぶ月と星。地上に灯る街の明かり。きっとその全てが、彼女と僕の眼にはまるで別のものが映っているのだろう。彼女と僕とは、軽やかに舞う鳥と野に横たわる亡骸のごとくに隔絶した存在。 「僕は、この音を聞くと寂しくなります。いえ、寂しさを思い出す」 「骸、」 「心臓の音は血が大量に流れ出す音に似ているとは思いませんか?」 優しいの目元が、いつも笑顔を形作る時とは異なる形に歪んだような気がする。それは紛れも無く僕のため。熱くなってゆくこの胸。ここに湧き起こる感情を嬉しいと呼ぶのか。 「骸、あんたは悲しい人だね」 は僕の瞼に、そして唇に口付けた。 濡れた彼女の唇は海の味がした。 身体を食ってくれた鳥 僕はを永劫愛す。『愛しています、』『あたしもよ』愛を僕に捧げると言った彼女は再び僕の身体に口付けた。 たった一人、嘆いてくれた君。ありがとう、愛しています。 ただ、共にいきたいとは言えなかった。 (共に逝きたい、共に生きたい) (雲祭骸祭様へ。企画参加させて頂きありがとうございました。)
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