「わっ、イザーク今度は双子生まれたの?」

「凄いな、もう4人目じゃないか」

「わぉ!イザークパパは大変だな」

「黙れ、このフリーターめ!!」



泣く子も黙る(?)ザフトレッドの面々はついに除隊をし、各々の人生を送り始めた。…訳ではない。



「あ、次僕の番ですね」



そう言って二コルはルーレットを回した。



「え……っと、”3”ですね」



出た目に従い己のチップを進める。



「あっ、ちょうど”給料日”です」

「本当?えっと、確か少し余計に貰えるんだよね。はい、二コル」

「ありがとうございます、。じゃあ次はですね。どうぞ」

「ええ」



続いて二コルに促されたがルーレットに手を伸ばす。
…そう。あの泣く子も黙るザフトレッドの面々はボードゲームを囲み、”人生ゲーム”の真っ最中なのだ。



「ハイ、ラスティの番よ」

「ん?何、なんだったの?」

「…“泥棒に入られて3000$払う”」

「うっわ、お前不運だな」

「うるさいよ、ディアッカ。…ラスティも笑ってないでさっさとやれば」

「ハイハイ」



に睨まれたラスティは「怖い怖い」といいながらルーレットを回す。出た目は最大数の“10”。



「お、ヤリィ」

「でも、目の大きさって関係なくない?」

、不吉なこと言うなって」



歓喜したところにからの不吉な一言。
ラスティはごくりとつばを飲み込み、1つずつマスを進めていった。



「む、遠くて読めねぇ。アスラン読んでくんない?」

「ああ。…”世界旅行に出かける。10,000$払う”だ、そうだ」

「ラスティだって不運じゃない」



アスランが読み上げたラスティの人生に、がすかさずツッコミを入れる。どうやら先ほど笑ったことを指しているらしい。 彼女は結構根に持つタイプだ。



「”泥棒に入られる”んじゃなくて”世界旅行”だから良いんだよ」

「だが、ゲームで支払う額は貴様のほうが高いだろう?」

「うわっ、イザークお前夢がねぇっ」

「私もそう思う…」



がそう言えば、二コルやディアッカも賛同して笑った。
アスランとが心中でイザークと同じ意見を持ったのは秘密だ。



「あー、でもマジで俺世界旅行とか行きてぇな」

「そうですね。僕も“世界”とは言いませんが、一度地球に行ってみたいです」

「そうだな。海とか見てみたいぜ。は見たことあんの?」

「うん!凄く広くて、キレイだよ」



ラスティの一言で、皆がそれぞれの夢に思いを馳せた。
世界旅行だけじゃない。このボードに刻まれた、何気ない人生の浮き橋がなんとも甘美なものに見えるのだ。



「…夢を見られるゲーム、か。少し素敵ね」

「ふんっ、…まぁな」





の科白に、イザークだけではない、この場の誰もが同調していた。

が自分のたどった道を指でなぞるのを、全員が目で追っていた。それは自分達の知らない 「日常」 。









この箱庭のような世界
僕らは壮大で他愛の無い
見たのだ。